2014年 6月 29日 日曜日
 
山田宗睦ほか共著

何のための知識シリーズ1
耳は何のためにあるか

発行:風人社
仕様:四六判/上製本/ 276頁
定価:本体2,300円+税
1989年8月10日発行
ISBN4-938643-00-6

★日本図書館協会選定図書
 全日本聾唖連盟推薦図書

表紙画 青木健真

本書の目次

著者紹介

知識シリーズとは

耳はたしかに外部の、空間の、物理的な音を聞く。
だが耳は、それだけではなく、神の声、内心の声、時の声を聞く。
そしてこの内の音信(おとずれ)を聞くとき、耳は人間の耳となったのである。
(山田宗睦/本書第1章より)
哲学・医学・物理・口承芸能……
切実な問いとしての「障害を通した」視点ほか、
徹底的に「耳」を問うアプローチ。 人間的な生き方に、
耳は本当の力を発揮しているだろうか。

 

本シリーズの第1弾として刊行

 数多くの新聞・雑誌の書評欄で取り上げられた。聴覚に関心ある人の必読基本書とまで、一部から評価をいただいた。聴覚のメカニズムについて、医学・工学からのアプローチで、基本的な知識から専門分野まで、詳細に深く述べられている。すでに、いくつかの類書に資科・転載の形で貢献できていることは光栄である。
  巻頭言は、哲学者山田宗睦の「耳はたしかに外部の、空間の、物理的な音を聞く。だが耳は、それだけでなく、神の声、内心の声、時の声を聞く。そしてこの内の音信(おとずれ)を聞くとき、耳は人間の耳となったのである」と結ばれている。
  口絵には、耳の造形を一生追い求めた彫刻家三木富雄の「EAR」を、詩人茨木のり子の詩「聴く力」をご好意により転載させていただいた。
  聴覚の秘密を握る「コルチ」器官の電子顕微鏡写真(星野知之氏提供)は、神秘の極みを視覚で味わうことができる。
  聴覚障害者の「音楽・考」は、読者の印象を強く打った。今までの「耳」のアプローチに欠けていた一つの視点である。

<口絵> 「EAR」(彫刻・三木富雄)
    「聴く力」(詩・茨木のり子)
    「有毛細胞」(顕微鏡写真・浜松医科大学 星野知之)

1 耳の意味を考える……山田宗睦

<コラム> 感性の響き合いとしての耳……尾藤イサオ

2 人の耳はどうなっているか?……向高洋幸
  耳の力を考える/耳はどこから来たか?/聞くことの入口 耳介・外耳道/空気の振動から個体の振動へ 鼓膜/
  音量の自動調節 鼓室/驚くべき鋭敏な毛のアンテナ 蝸牛/平衡器官としての耳 三半規管・前庭/
  信号の伝達組織と中継検問所 聴覚神経/耳の病気/難聴という耳にとっての重大な問題/めまい・耳鳴り

3 耳の知覚……千葉滋
  音はどのように知覚されるか?/なぜ人の感覚は対数的なのか?/耳はどこまで聞こえるか?/音色とは何か?/
  なぜ耳は二つあるのか?/ヘッドホンで聞くと頭の中から音が聞こえる?/カクテルパーティ効果とは?/
  聴覚は錯覚をおこすか?/快い音、不快な音とは何か?/音声・音楽の認知/耳と眼はどちらが強い?/
  右耳と左耳は同じ?/耳からの情報、眼からの情報/音のない世界(無響室)での体験

4 機械の耳……千葉滋
  なぜ機械に耳が必要か?/機械の耳・人の耳/ニューロン・コンピュータによる音色の認識/音声とは何か?/
  音声の最小単位、音素とは何か?/会話音声の性質/人は音声をどのように知覚しているのか?/
  機械による音声認識はどこまできたか?

5 障害を通して考える
 ■心の対話−−聾教育の体験から……大嶋功
  障害児教育は、まず親が……/不自由なればこそ心を聞く/普通の子供のなかで育てる/
  目が見えるだけでは本は読めない

 ■聴こえない世界からの音楽考……森壮也
  音楽ワークショップの始まり/少年時代の楽器体験/聴覚障害児と音楽/再び少年時代の楽器体験/
  友人に教えられた「聴く音楽」の世界/自分の音楽とは何か?/「聞こえない」ことと「音楽」/
  「自分の耳」の「自分の歌」

 ■補聴器の歩みと今後の課題……庄野久男
  山野で学んだ知恵/耳の悪い人に使えないか/電話の誕生と電気式補聴器/相次ぐ革新の時代/
  「補聴器効果」というマイナスの影響/現在の補聴器の課題/補聴器は体の一部になれるのか/私たちの宿題

6 昔話「聞き耳頭巾」を考える……中村とも子
  「聞き耳」の登場する昔話/聞き耳譚の主人公/主人公は何を聞いているか/欠損をおぎなうものとしての聞く力/
  聞く力を持つ者=異種の人/聞き耳を得た子供たちの到達点/「聞く文芸」としての昔話

索引

山田宗睦……(やまだ・むねむつ)1925年生まれ。京都大学文学部哲学科卒。関東学院大学教授。著書『現代哲学の設計』『道の思想史』ほか多数。日本書紀史注   痛み   まち くび

尾藤イサオ……(びとう・いさお)1943年生まれ。歌手・俳優。全日本ロックコンサート優勝。プレスリー賞受賞。『マック・ザ・ナイフ』『悲しき願い』『あしたのジョー』、舞台『アニー』

向高洋幸……(むこうだか・ひろゆき)1947年生まれ。東京大学法学部、浜松医科大学医学部卒。聖隷浜松病院耳鼻咽喉科医師

千葉滋……(ちば・しげる)1946年生まれ。東北大学工学部卒。同大学院修了。工学博士。電子技術総合研究所(通産省)音声研究室主任研究官。

大嶋功……(おおしま・いさお)1907年生まれ。東京帝国大学文学部卒。日本聾話学校長。ヘレンケラー賞・朝日賞ほか福祉関連の受賞多数。

森壮也……(もり・そうや)1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。同大学院修士課程修了。アジア経済研究所勤務。聴覚障害児のための音楽ワークショップ・スタッフ

庄野久男……(しょうの・ひさお)1918年生まれ。無線電信講習所卒。リオン株式会社元取締役・聴能研究室長。補聴器及び植込型人工中耳の共同研究に従事。著書『聴覚障害』(共著)ほか

中村とも子……(なかむら・ともこ)1954年生まれ。日本女子大学文学部卒。日本口承文芸学会会員。著書『雪の夜に語りつぐ』